暮らしの手帖
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床下エアコンとは?

〝床下エアコン〟という仕組みをご存知でしょうか?床暖房なら聞いたことあるけど…という方がほとんどだと思います。床暖房は、メーカーさんによって様々ですが、床下に熱源となる電気ヒーターや温水パイプなど、専用の機器を巡らせて、床自体をポカポカに暖めてくれるシステムです。輻射熱でお部屋自体も暖かくなりますね。
一方床下エアコンは、床下に特に機器を巡らせたりすることなく、補助用のエアコンもうまく活用しながら建物を均一に温度管理しようという全館空調のシステムです。ふつうの電気屋さんで購入できる市販のエアコンを使った仕組みなので、初期費用やメンテナンス費用を抑えて全館空調ができるというのが特徴です。
全館空調って?と思われた方はこちらのブログで詳しくご説明しています^^
全館空調とは?
今回は、床下エアコンとは何なのか?仕組みや採用する上でのメリット・デメリット、注意点などについて、実際の施工写真も交えながらご紹介していきたいと思います。
1.床下エアコンとは?

図で書くと、このようなイメージです。
1階の床下部分にエアコンを設置し、お家の基礎の中にエアコンの暖気や冷気を吹き込む仕組みです。上記の図では、冬場もファンをまわすように記載していますが、暖かい空気は軽いので、上へ上ろうという力が自然に働きます。冬場は様子を見ながらファンを使用していただく形で大丈夫だと思いますが、夏場の冷房使用時の場合、冷気は重たいので下部にたまりやすいという性質があります。その為夏場はファンを稼働させて強制的に室内に冷気を排出させていくような使用方法をとります。基本的には、補助用のエアコンもうまく活用しながら計画していく、冬場の暖房使用をメインに考えた全館空調の仕組みと考えて頂くといいのかなと思います。

ちなみにこちらは床置きエアコンという、エアコンの上部と下部、それぞれに吹き出し口があるタイプのエアコンで、吹き出しパターンを切り替えて使うことが出来ます。
上部の吹き出し口から冷気を出せるので、こちらの床置きタイプのエアコンを設置すると、夏場の冷房時にも直接上部へ吹き出すことができます。

通常の壁掛けエアコンに比べると、少し割高ではありますが、こちらも何十万もするようなものでもなく、電気屋さんでふつうに購入できるものになります。
ちなみにこちらは普通の壁掛けエアコンを使用している例です。

もちろん通常の壁掛けエアコンを使用することもありますし、お家の間取りや広さ、補助用のエアコンの台数や位置などを総合的に考慮してどちらを採用するかも検討しています。(あくまで目的は、少ないエアコンでお家全体を均一に空調管理すること、です。)
よく見るとメンテナンスがしやすいように床部分が外れるように細工をしています。また、普段はあまり目につかないようにテレビボードの中や収納と併せて計画したり、目立ちにくいように計画をします。


各居室や廊下など、家々でどこ設置するのが最適か検討しながらガラリを設け、必要なところにブースターファンを設置して床下から室内を冷やしたり、暖めたりしていきます。


(左)ガラリ(右)ブースターファン
ガラリの中には写真右のような、ブースターファンという機械を取り付けています。このファンが回ることで、エアコンの風を各居室へ送り出すサポートをしてくれ、お家の中をエアコン一台で暖めたり冷やしたりすることが可能になります。
ただ、どこのお家でも採用できる!というわけではなく、こちらの仕組みを採用する上で、大前提として〝断熱性能と気密性能が確保されたお家である〟ことが大切になってきます。具体的に言うと断熱性能は、HEAT20のG2レベル(長崎県で言うとUa値=0.46)、気密関能はC値=1.0以下をクリアしたお家づくりを行い、お家そのものの性能を高めてあげることが非常に大切です。魔法瓶のようなお家だからこそ、少ないエネルギーでお家全体を暖めたり冷やしたりできるということですね。
気密についての記事はこちらからどうぞ^^
2.床下エアコンのメリット

●エアコンを各室につけずに温度管理ができ、見た目もスッキリ
従来のようにエアコンをたくさんつけずとも、居室から出て廊下やお風呂場に行っても暑い寒いがない、温度差がない室内空間の計画が普通のエアコンで出来るという点です。また、見た目上も目につくところにエアコンがなくてすっきりします。
●初期費用、メンテナンス費用を抑えられる
床下エアコンの最大のメリットは、初期費用が抑えられるということがあります。工事内容で言うと、ふっつの電気屋さんで購入できる壁掛けエアコン(または床置きエアコン)と、ブースターファンという機材の設置、それに加えて結露対策でエアコン付近に断熱材を施工するなどの工事が必要になります。そのため機材や大工さん、電気さんの施工賃という部分が費用面では発生しますね。ただ、非常にシンプルな仕組みになるので、繰り返しにはなりますが、一般的なメーカーさんが出しているダクトを這わせて管理する全館空調に比べると、ぐっと初期費用が抑えられます。
また、もし壊れてしまった時も、特殊な機械や部品を使っているわけではないので、電気屋さんでエアコンを再度購入し、設置するだけなので維持費の面でも何十万もかかることがない、というのが採用する上での大きな魅力です。
3.床下エアコンのデメリット

●しろあり被害対策をしっかり行う必要がある
家は(床か基礎)・壁・(天井か屋根)のそれぞれに断熱材を施工し、お家全体をぐるりと包むようにして外気の温度変化を伝えにくくするように施工します。床下エアコンのような、床下空間を使った全館空調を採用する場合、基礎の中までエアコンの風を送り込めるよう、床下内も室内空間と同じような扱いにするために基礎に断熱材を施工します。
この場合、シロアリ対策をしっかり行っておく必要があります。なぜなら床断熱と比べて、シロアリが断熱材と基礎の立ち上がりの間を通って侵入しても、外から蟻道が見えないため発見が遅れてしまうことや、基礎断熱に使用する断熱材自体がシロアリの餌となってしまうからです。
シロアリについての関連記事はこちらからどうぞ
●夏場の冷房が難しい
夏場はブースターファンを稼働させて、冷気を引き上げるように使いますが、冷たい空気は下の方に溜まりやすい性質があるため、慣れてくると物足りなさを感じることも。熱さが厳しいときは、補助用のエアコンをうまく活用しながら快適だと思える室温がどれくらいか調整を行う必要があります。
●施工実績がまだ少ないので何らかの不具合が出る可能性も
全国的に見るとまだまだ施工実績が少なく、新しい方法なので、何かしら不具合が起こる可能性も否定できません。計画・施工する上での注意点もたくさんあります。もちろん不具合があった場合は対応をさせて頂くことを前提として、お客様にはご案内をさせて頂きますが、こういった不安材料が残っていることをデメリットとして受け入れられるか?というところは、採用を決めて頂く上で非常に大切な部分になってくるかなと思います。
●エアコンの保障は使えない
エアコンのメーカーさんが推奨している使い方ではないため、故障した場合、保証を使っての修理は期待できません。ただ、エアコンに極端に負荷がかかるようなおかしな使い方をしているわけではありませんし、使用し始めてすぐ壊れたという事例は今のところ採用実績のある同業の工務店さんからも挙がっていません。エアコン自体は消耗品になりますので、いつかは買い替えが必要になります。何十万もする機材ではありませんので、そういった意味ではそこまで気にする必要はないかなとも思いますが、採用する上では知っておきたい情報ですね。
4.床下エアコンのメンテナンスはどうすればいいの?




床下エアコンの床部分は、メンテナンスのため、床部分が取り外しができるように施工してあります。
●フィルターのお手入れ
普段のお手入れとしては、他のエアコンで行っているのと同様に、フィルターのお手入れは定期的にに行ってください。
●エアコン本体からの水漏れがないかの定期的な確認
エアコンはドレンホースからエアコン内部の水分を排出しています。その為ドレンホースが詰まると水が逆流して、エアコン本体から水漏れすることがあります。通常の壁掛けエアコンの場合は目で見てわかるのですが、床下エアコンの場合は、エアコン自体が半分埋まっていて気づきにくい状態にあります。水漏れしても躯体が直接濡れないよう、受け皿を設置していますが、定期的に水漏れがないかの確認をしてください。
●ドレンホースの定期的なお掃除

上記にあるように、水漏れ防止のために定期的にお手入れ用のサクションポンプを使ってドレンホースの清掃を行ってください。
5.まとめ
全館空調の1つである、床下エアコンについてご紹介してきましたが、どうだったでしょうか?メリットもあればデメリットもあり、施工会社がリスクをきちんと理解して対応をしてくれるかという点は重要ですし、お施主様自身もきちんとリスクを理解しておくことが必要です。ただ、コストをかけずに快適な空調計画ができることには間違いありません。リスクの部分も許容できるな、と思われた方にはおすすめです。
採用されるまでには、施工事例や、実際に採用している建物で事前に体感してみるのがいいかなと思いますので、完成見学会などへ足を運んでみてくださいね^^
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