暮らしの手帖
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そとん壁のメリット・デメリット|外壁材を選ぶ
外壁材は、お家の外観のイメージを大きく左右するので、家づくりを検討中の方は悩まれている方も多いのではないかなと思います。今回は、モデルハウス諫早の家でも使われている「そとん壁」についてご紹介します。
1.「そとん壁」とは?
「そとん壁」とは、シラス台地の「シラス」から出来ている外壁材です。
シラス台地は鹿児島県から宮崎県南部にかけて、最大150メートルもの厚さでシラスが積み重なっているのですが、サラサラした粉状の土は水持ちが悪いので水田には向かず、豪雨の際には土砂崩れを起こすなど地元では厄介者とされてきました。
シラスは、マグマが噴火と同時に冷やされて火砕流となり、堆積したものです。火山灰と混同されがちですが、火山灰が吹き上げられて落ちてくるまでの間に含まれていた多くの成分が揮発してしまっているのに対し、シラスはマグマが急激に冷やされて火砕流となったため、シラス粒子の中にはマグマの成分そのものが閉じ込められています。
シラスはとても細かい微粒子の中に、無数の穴が開いた複雑な構造を持っています。シラスの主成分珪酸(けいさん)は、除湿剤の主原料でもあるので調湿性に優れ、無数にある空洞はニオイや化学物質を吸着してくれます。人工ではつくれない複雑な構造と成分はまさに自然現象の賜物です。地元では厄介者扱いされていたシラスの有効活用に成功したのが高千穂シラス壁です。室外だけでなく、室内でも使用できます。
2.「そとん壁」のメリット
では、そんな画期的なそとん壁を外壁材として用いると、どんなメリットがあるのでしょうか?
①100%自然素材なのに完全防水
シラス外壁材は下塗り材と上塗り材の2層構造になっていて、下塗り材は超微細なシラス粒子で構成されています。そのため、水蒸気の細かい粒子は通しながら、雨水の大きな粒子は通しません。また、シラス壁だけの防水のしくみ(「くの字現象」といいます)で、シラス壁に浸み込んだ雨水は、隙間が細かい下塗り材にはほとんど浸み込むことなく、重力によって下方向に引っ張られながら、隙間が大きく抵抗が少ない上塗り材の表面へと流れていきます。(軽量モルタルの場合は、浸み込んだ水が分散し、建物内部に浸透してしまいます。)
②自然の透湿機能で建物を守ってくれる
多孔質なシラスは、透湿性に極めて優れています。表面の防水塗装が要らないため、壁内部の湿気が壁表面から放出され、建物を湿気による結露やカビの被害から守ります。
③基本的にはメンテナンスフリー!厳しい自然環境でも劣化しない高耐久性
シラスは、マグマの超高温で焼成された高純度無機質セラミック物質であることから、「マグマセラミック」と呼ばれています。シラスは無機質の天然セラミック素材。そのため紫外線や風雨による退色・劣化がおきにくく、汚れも付きにくいです。また、防水性も劣化しにくいので、維持管理の費用と手間を大きく軽減してくれます。風合いに多少の変化は見られますが、基本的にはメンテナンスフリーで性能を維持できるというところもうれしい外装材です。
④断熱・保湿効果
先日のブログ「空気がトップレベルの断熱材!?」でも触れていましたが、本当にその通りで、空気層を含むと断熱性能が高まります。そとん壁は多孔質のシラス粒子内部に空気を取り込み、断熱層を形成するため、外気の温度を建物内部に伝えにくく、冷暖房の効率をアップさせてくれます。遮音性にも優れており、バランスの良い外壁材だと言えます。また、蓄熱しにくく輻射熱をやわらげてくれるのでヒートアイランド現象の抑制にも一躍買っています。
⑤自然素材ならではのデザイン性
シラス独特の風合いと質感に富んだ新しい外観デザインを生み出してくれます。人工物には決して表現できない本物の質感と、継ぎ目のない仕上がりで建物の印象を上品に仕上げてくれます。
3.そとん壁のデメリット
①ひび割れのリスクがある
左官塗りによって仕上げられていますので、地震などによってひび割れが起こるリスクがあります。実際には、ひび割れを防ぐような下処理を行っているので可能性は低いですが、そういったリスクがあることは理解しておいた方がいいかなと思います。また、無機質な素材を上塗りとして使っているので表面がぽろぽろと落ちることがあります。表面だけの話なので、モノに問題があるわけではないのですが、採用する際は、この点もそういうものだと理解して頂く必要があります。
②他の塗壁と比べるとコストがかかる
耐久性や快適性、風合い、メンテナンスのしやすさなどを加味すると妥当なところではありますが、初期費用が他の外壁材に比べると高い所は少しネックかもしれません。
4.そとん壁のメンテナンス方法
厳しい環境でも劣化しない高耐久性を持ち、退色や劣化がないそとん壁。塗り替えや張り替えなどのメンテナンスは不要です。シラスは前述の通り無機質なので樹脂のようにカビが繁殖することもなく、静電気による汚れの吸着も発生しにくいです。
しかし、排気ガスや粉じんをもらうと、そこに汚れが付着することがあります。汚れが目立ちにくい風合いではありますが、そのままにしておくと紫外線で焼きついてしまい、落とすのに時間がかかる場合があります。汚れが付着しているのに気づいたら、スチーム式の洗浄機で洗ってあげると、表面と、細部の溝の汚れがしっかり落ちるのでおすすめです。(高圧洗浄機を使って頂くのも問題はありませんが、細部の汚れが取り切れない場合があります。)
●日常的なお手入れ
サッシ枠や、手すりなど、雨を伝わせそうな場所のホコリや汚れを気づいた時に拭いてあげると、雨だれによる汚れがそとん壁に着くのを防げます。
●汚れ(雨だれ・泥はね・コケ等)の落とし方
ご家庭にある台所用洗剤などの中性洗剤でおそうじができます。中性洗剤を水で薄めたものをつくり、亀の子束子をつかって磨き落としていきます。磨いた後は、たっぷりのお水でよく流して完了です。前述した通り、無機質なのでコケやカビが発生するリスクは低いですが、環境や、汚れを放置すると発生する恐れがあります。その際は、スチーム洗浄機で洗い流してあげるとOKです。どんな汚れにしても、放置すると落とすのに時間がかかってしまうので、汚れているなと気づいたら、早めに対処するのがおすすめです。
●傷やクラックが入ってしまったら・・・
シラス壁は100%自然素材。合成樹脂などの化学物質は使用していません。そのため、建物の揺れや構造の乾燥による収縮で、稀にクラックが発生することがあります。(機能の低下や建物の安全性への影響はありませんのでご安心ください。)出来てしまったクラック部分は、専用の補修用キットで直すことが出来ますので、お気軽にご相談ください^^
5.まとめ
外壁で一般的な「サイディング」は、模様を印刷しています。プリントなので、退色や剥がれなど、経年劣化していくのは避けられません。だいたい10年を目安に塗り替えが必要と言われています。また、表面の劣化による見た目の変化だけではなく、サイディング同士の継ぎ目をコーキングというプラスチックで充填しているのですが、その寿命も約10年、短ければ約5年といわれています。紫外線で割れたり、すいたりしてそこから雨水が侵入してしまえば、お家自体に深刻なダメージを与えてしまいます…。
どちらにせよ10年サイクルでメンテナンスが必要になってくるわけですが、コーキングの撤去、打ち替え、外壁塗装をするのには足場を組んだりする必要もあるので、約30坪くらいのお家で約100万円ほどはコストを見ておく必要があります。30年そのお家に住むと考えても、ざっと300万のメンテナンス費用がかかってしまいます。
初期費用という観点で見れば、そとん壁は決して安い買い物ではありませんが、ランニングコスト・外観の美しさ・風合いを考えると非常にバランスの良い外壁材だと言えます。
外観の印象を左右しますし、好みもあるかと思います。外壁材に限ったことではありませんが、素材の特徴をよく知って自分たちに合ったものを使うことが、その家で永く住まうためにも大切なことではないかなと思います。