暮らしの手帖

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断熱性を高めると快適さが増すわけは?

投稿日 : 2021年08月17日 (火)
カテゴリー : 暮らしの情報

「高断熱・高気密」という言葉を最近耳にすることも増えたのではないでしょうか?断熱性・気密性、それぞれの性能を確保することは、未来の暮らしを快適にするためにとっても大切なことです。どちらかが欠けてもダメで、両方の性能をしっかり高めてあげることが重要です。

▽気密の重要性についてはこちらの記事からどうぞ
高気密とは?ー住宅に気密性が必要な理由ー

今回は、高断熱とは何か、また、どれくらいの性能を確保しておく必要があるのかについて書いていきたいと思います。

 

1.そもそも、「断熱」とは?

熱は温度の高い所から低い所へすぐに移動します。冬場で例えると、室内で温められた熱はすぐに外へ逃げてしまうのです。「断熱」とは、その″熱の移動を断つ(減らす)〟ということです。

そのために、住宅は外気と接する部分である

・屋根or天井
・壁
・床or基礎

などの外周部に、熱が移動しにくくなるように断熱材というものを施工します。断熱材には色んな種類があり、素材ごとに性能もそれぞれ異なります。

▽素材ごとの特徴についてはこちらのブログからどうぞ

断熱材の種類と選び方

▽窓の性能についてはこちらから

性能の差を生む窓の選び方(ペアガラス?トリプルガラス?)

上記のブログ内でもご説明していますが、素材の熱の伝わりやすさは〝熱伝導率(W/mK)〟という単位で表されます。各素材の表面積1㎡あたり、「厚さ1mあたり」の熱の伝わりやすさを意味します。

熱伝導率が素材単位での性能を表すのに対し、壁や天井、床は複数の材料が層になっています。そこで、素材の厚みや重なりを考慮して、1㎡あたり室内からどれくらいの熱が出ていくのかを表す単位としては、〝熱貫流率(W/㎡K)〟という単位を用います。

さらに、家全体の断熱性を図る指標として、〝Ua値〟というものがあります。これは「外皮平均熱貫流率」と言われ、建物内外の温度差が1℃の場合に、1秒あたりに外に逃げていく熱量の合計を「外皮の合計」で割った数値を表します。 それぞれ数値が小さいほど、性能が良いことを意味します。 3つの単位についてご説明しましたが、簡単に言うと「高断熱」とは、この外皮平均熱貫流率の数値が小さいこと、室内外の熱の損失が少ないということです。

 

2.なぜ高断熱がいいの?

 

なんだか小難しい話になってしまいましたが、なぜ高断熱が求められているのでしょうか? 「エアコン代が安くなるから?」 そう思う方もたくさんいらっしゃるかもしれませんね。もちろん、無断熱のお家と比較すると安くなると思います。しかし、断熱性を高めたからといって、光熱費が劇的に安くなるわけではないんです。 そう聞いて、「な~んだ、がっかり・・・」そう思われた方もいらっしゃるかもしれませんね^^; しかし、断熱性を高めたお家だと空間を広く使えるようになります。 どういうことかご説明しますね。例えば断熱性が低いと、 「廊下やトイレに移動すると寒い」 「結局エアコンが効いているリビングのコタツでぬくぬく・・・」 といった過ごし方をしていたところを、断熱性能の高いお家であれば、お家中どこにいっても快適でのびのびと暮らせます。家族で一つの部屋に集まってぬくぬく過ごすのは、それはそれで幸せなことですが、家を建てるのには数千万というお金がかかってきます。家の一部分しか使えないお家か、まるごと快適に使えるお家、どちらがいいでしょうか? 答えはもちろん、後者ですよね。 では、なぜ快適に過ごせるのか?というと、それは、人が暑さや寒さを感じる「放射(輻射)」という考え方に答えがあります。

身の回りにある全ての物体は、その温度に応じて熱を発しています。建物の中では、床も壁も天井も放射していて、それぞれ表面温度が高ければ高いほど、放射熱の量も大きくなります。もちろん私たち人間の身体も、表面温度に応じて熱を発しています。この〝体から発せられる放射熱の量〟が人間の快・不快に深く関わっています。

簡単に言うとアツアツの物が近くにあるとこちらも暑くなってきますよね、その感覚です^^ 人間の身体の表面温度は35-36℃くらいで、それに応じて放射を行っています。夏に壁の表面温度が36℃くらいに上がると、壁からの放射の方が大きくなり、それが体に伝わってくるので熱く感じられます。逆に冬場、壁の表面温度が15℃くらいに下がると、体から出ていく放射が増えて、寒さを感じるようになるのです。熱は温度の高い所から低いところへすぐに移動する、と最初にお伝えしたのはこういったイメージです。 繰り返しになりますが、断熱性能が良い家は、壁・床・天井に適切に断熱材が施工されています。そのため外気に接する部分の表面温度が適切に保たれるため、中で過ごしている私たちは放射による熱の損失が少なく済み、快適に過ごすことができるのです。

 

3.どれくらいの性能を確保できていたらいいの?

実際に、どれくらいの性能を確保できていたら良いのかというと、壁の表面温度が16℃、夏場であれば壁や窓の表面温度が31℃くらいまでに保てていれば、不快と感じずに過ごすことができそうです。

それでは、具体的に前項で触れていた性能値で見ていくと、どれくらいになるのでしょうか。

日本の中でも北海道と九州では気温にだいぶ差があるように、地域ごとに快適だと感じる温度は異なります。そのため、国は8つの地域区分を設定しています。

こちらのグラフは地域ごとの断熱性能値を表しているものです。

1973年のオイルショックで深刻な経済への打撃を受けた日本は、それをきっかけに通称〝省エネ法〟と言われる法律を1979年に定め、様々な省エネ対策を進めてきました。住宅業界もその例にもれず、制定されてから何度か改定を行い、2013年に現行の省エネ基準というものができました。しかし、残念ながらこの水準はだいぶゆるいもので、クリアできていたとしても快適性の意味では物足りないというのが現状なのと、この基準をクリアすること自体、現在義務化されていないので、断熱性能が保持されていない住宅でも今は建てられてしまうのです…。

そこで、これからの家づくりにおいて目指していきたい指標として、〝HEAT20〟の定める性能値があります。

HEAT20とは、「2020年を見据えた住宅の住宅の高断熱化技術開発委員会」という機関のことです。国の制度・基準とは一線を画した民間の組織で、本当の望ましい姿を住まい手に提案することを目的に、2009年に日本でも発足しました。ただ単に省エネを推進する、というよりは、「室内環境の向上には外皮性能を上げることが大切だ!」という暮らしの快適性の部分にフォーカスして動いている団体です。一般の方でもわかりやすい、「室温」を指標に、現在G1~G3までの3つのグレードを現在提示しています。

上記の表にある性能値をクリアすることで、どのような室内温度環境になるのかが比較されていますのでこちらをご覧ください。

引用:HEAT20公式ホームページ

彼らが提唱している基準のうち、快適・健康性を考えて提示している性能レベルの内、HEAT20 のG2 グレードは体感とコストのバランスのとれたグレードではないかなと考えます。具体的には、冷暖房を入れないでも冬場の体感温度が13℃以下になる割合は15%以下にとどまり、暖房負荷は省エネ性能基準の家よりも50%削減できます。性能値としてここまでクリアすると、少ないエネルギーで家を温めたり、冷やしたりすることが可能な快適な住まいになります。

現在はG3という基準が発表され、今後もさらに上の水準が発表されていくかもしれません。なんだかどこまでクリアすればいいのか迷子になってしまいそうですよね。お金をかけて断熱性能を上げていくことはもちろん可能です。ただ、大切なのは体感的な部分とコストとのバランスではないかなと思います。自分の住んでいる地域でその性能値のお家が一体どれくらいの体感温度になるのかは、一度実際に体感してみるのが一番いいかなと思います。大切なのは、外皮の性能を上げることの重要性や、指標について理解すること。最終的なコストのバランスも含めたお話は、信頼できる担当の住宅会社の方に相談してみながら、進めていけると安心ですね。

 

4.まとめ

断熱とは何か?という部分から、断熱性能を上げることの重要性、また、どれくらいのレベルを目指すべきなのかについてお話してきました。今後のお家づくりにおいては、HEAT20のG2グレードをクリアできるような計画が出来ると、その後の暮らしの快適性が大きく変わると思います。計算した上で計画していけると安心ですよね。そういった意味では、きちんと理解のある会社さんを選ぶ、という点が住まい手の方には第一の関門かもしれません。(笑)また、このUa値というのはあくまで机上の数値になります。この数値をきちんと発揮した住まいをつくるためには、冒頭でも書いていた通り、気密性能の確保という部分が外せません。両方大切だということを住まい手の方もしっかり理解し、その部分をクリアしてくれる会社さんを選ぶということが大切なことかなと思います。お家づくりのパートナー選びは難しいですが、わからないことはなんでも質問しましょう^^断熱性能や気密性能の数値は、会社選びの指標になると思いますので、具体的な数値を交えながらコミュニケーションをとって決められたらいいですね。また、決めた後は信頼して任せる!というスタンスで進めていくのも、お家づくりでは大切なことかなと思います。

ご参考になれば幸いです。

 

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