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耐震等級3は必要?ー構造計算(許容応力度計算)の重要性ー

投稿日 : 2019年07月02日 (火)
カテゴリー : 暮らしの情報

地震大国日本、この30年を振り返るだけでも、下記のような大きな地震が起こっています。現在確認されている活断層(過去に繰り返し動き、将来的にも動く可能性のある地層の切れ目のこと)の数は、把握されているものだけでもその数2,000ヶ所以上。マグニチュード3以上の地震は毎月約400 回以上も発生しています。

気象庁によると、「国内では地震が発生しないところも、大きな地震が今後も絶対に起きないところもない」と発表されています。今まで地震による被害を受けてきていない地域でも、他人事ではいられない自然現象です。

阪神淡路大震災後のデータによると、亡くなった方のおよそ86.6%とおよそ大半の人が家の中で亡くなっていることがわかっています。また、その死因のほとんどは圧死、その次が焼死。大地震の発生で倒壊した家は地震が起きてわずか5~10秒で倒壊していて、亡くなった方の大半は地震発生後15分以内に亡くなられているというデータが出ています。死因のほとんどが家の倒壊による圧死。怖いですよね…。もし倒れない家に住んでいたらと、そう考えずにはいられません。

これから建てる家は、災害があった時に、命を守れる家であるというのは大前提として…その後はどうでしょう?命は守られたけどそこで生活はできない。でもまだローンは残っている…そうなった場合、どうなるのでしょうか。

金額の減免措置などがあったとしても、基本的に住宅ローンが全額免除になることはなく、地震保険も家の建て直しや大規模な補修を賄えるほどの保険金は出ません。あくまで、生活再建のためのお金と考えておく必要があります。再びローンを組んで家が建てられる年齢であればいいですが、そうじゃなかったら・・・?ローンを払いながら、賃貸に住むという選択をすることになってしまいます。

10年に1度よりも多い頻度で大きな地震が起こっている日本。特に熊本地震では震度7の地震が続けて2回起きました。そう考えるとこれからのお家づくりは、大地震があっても、「そこで生活を続けられる家」であることが必須です。そのようなお家づくりには何が必要なんでしょうか?今回はその点についてまとめていきたいと思います。

 

1.耐震基準の歴史

日本の耐震基準は、日本の各地域で大地震が起きるたびに被害の教訓を反映し、耐震にかかわる法律や基準が改正されてきたという歴史があります。つまり、住宅の耐震性能の歴史は、大地震の履歴ともいえます。木造のざっとした遍歴は以下の通りです。

 

これらの耐震に関する法改正の歴史を振り返ってみると、想定外の大地震が日本ではいくつも発生し、そのたびに多くの方々の命と生活が犠牲になってきたのだと感じます。こうした大地震から学び、法律上耐震等級1を確保することが建てる上で義務化されました。

 

2.耐震等級とは?

平成12年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で登場した、施主に判りやすい耐震性の判断基準として、1~3の数値表示による3段階の耐震等級が定められました。それぞれの等級内容は、以下の通りです。

先述の通り、現状耐震等級1を確保していれば法律上は建てることが出来ます。しかし、震度6~7の地震が来て即倒壊はしないけれども大規模修繕や建て替えとなる可能性があります。最低限命は守るけど、その後の生活は保障できない、つまりギリギリのラインなのが耐震等級1です。耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の強度がある建物。震度6~7の地震が起きても一定の補修がなされればその後も住み続けられるというものです。耐震等級3は等級1の1.5倍の強度があり、震度6~7の地震が起こっても軽い補修程度で済み続けられるレベルです。

記憶に新しい、熊本地震では震度7の地震が2度発生しました。観測史上初となる震度7の地震が連続発生したことで、熊本の地域は大きな被害を受け、震源地付近の益城町では多くの方が建物の倒壊によって亡くなりました。この尊い犠牲の元に新たな知見が得られており、耐震等級3で設計された戸建は、ほぼ無被害または軽微な被害状況で、その後も住み続けられるということが証明されました。

地震があってもきちんと命を守り、その後も住み続けられるのです。「地震が来て壊れたらその時だ、しょうがない。」そんな風に安易に考えるのは危険です。自分が良くても家が倒れたら周りの避難経路を塞いでしまうかもしれません。お隣さんが逃げられなくなるかもしれません。自分の家だからいいという理由では片付かないのです。これからの家づくりにおいては、耐震等級3の家を建てることは必須だと思います。

 

3.「耐震等級3相当」って何?

「耐震等級3相当」という言葉を使っている住宅会社があります。

「耐震等級と書いてあるから、耐震性能のことだろうな」とはわかりますが、「相当」という言葉がなんだか引っ掛かりますよね。「相当」には、「その物事に匹敵する、その物事と同じくらい」という意味があります。つまり、「耐震等級3相当」とは、「耐震等級3と同等」を意味しますが、「なぜ等級3と言い切らず相当なの?」、と少し怪しく思えてきますよね。

耐震等級の評価、認定をしているのは住宅性能評価機関という専門機関になります。耐震等級を高めた地震に強い家にするためには、耐震力のある建築部材を利用する必要がある他、間取りも耐震に影響してくるため、精密なやり方で耐震性を測定する基準が設けられています。それがいわゆる構造計算(許容応力度計算)と言うものです。これを行うには、計算費用も含めて建築費用が50~60万ほど高くなります。しかし、費用が掛かるからと言ってやらないことのリスクは大きいように思います。

 

 

構造の安全性を図る手段として以下の3つがあります。

 

 

上記のように、それぞれ違いがあり、許容応力度計算をするかしないかで耐震性に対する信ぴょう性が大きく違ってきます。下の表は、それぞれの計算のされ方、大枠の費用をまとめたものです。

 

現状建築基準法では、500㎡以下、二階建て以下の木造住宅は簡易な壁量計算のみで申請が出来、「構造計算」は義務化されていません。そのため正式な検査は受けていないけれど、耐震等級3の認定を受けている建物と同レベルの建築部材を使用するなどして、同じくらいの耐震性があると謳っているのが耐震等級3相当の建物です。

実際に証明されている耐震等級ではないことを考えると、それでいいの?という疑問がわいてきますよね。費用が高い、義務化されていないし手間だからという理由等で命を守れないのでは本末転倒です。

 

4.まとめ

地震はいつくるかわからない、来ないかもしれないし、お金もかかるならまあいいか、という問題ではありません。日本全国、どこもこの先大きな地震が絶対起きない、という確証がある場所はないのです。もし自分の住んでいる地域で大きな地震が起こってしまったら?家が大きな被害を受けたら?自分の家が倒れたせいでだれかが下敷きになってしまったら?避難経路を塞いでしまったら?不安は尽きませんし、他人事ではいられないと思います。

大地震の後、軽い補修で済み続けられる家と、何とか倒壊は免れたけど大破してしまって建て直さなければならない家とでは、その後の人生に雲泥の差があります。

繰り返しになりますが、熊本地震から学んだ通り、耐震等級3はこれからの家づくりにおいて必須です。ぜひ、真剣に考えていらっしゃる住宅会社さんを選んで、安全な住まいづくりを進めてください。

 

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