暮らしの手帖

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窓から住環境を考える

投稿日 : 2018年08月18日 (土)
カテゴリー : 暮らしの情報

住環境と聞いて、皆さんは何か想像することはありますか?

家づくりをしていく上で私たちは、夏は過ごしやすく涼しい家、冬は暖かい心地良い家にするというミッションのもと“温熱環境”について、日々学び考えています。昨今の異常気象および地球温暖化からもこの夏もひどい猛暑続きです。これから先はもっと深刻になることでしょう。

2020年に省エネ基準が義務化され、高断熱化の家が多くなるように思われがちですが、この基準もすでに5年前のもの。性能がぜんぜん足りません。「今の家は全部夏涼しくて、冬暖かいから大丈夫でしょ!」と安易に考えておられる一般の方。また同業の方もぜんぜん知りません。長崎であってもしっかりした性能を数値化して進めることで、やっと快適な住まいが実現します。

そんな快適な住まいを考えるうえで、まず大事なことは窓を考えることです。そんな窓について、「屋内環境と屋外間の繋がり」というところから考えたいと思います。

とりわけ日本人は、縁側のように屋外環境と自然につながれるような空間を1つの理想的な住環境として捉えてきました。これは柱と梁で構成されて外への空間へと段階的につながっていく、伝統的な日本建築の空間構成にもよく表れています。古くからある、いまでも多くの人々が足を運び、世界中の人々を魅了する建築物は外とのつながりを大事にして、景観を楽しめるものが多く存在します。そして、この屋内外のつながりによる魅力的な住空間を作るためには、窓や出入り口など一部が解放された部分(開口部)の設えが重要となります。

しかし、問題は外部とのつながりには断熱性能を低下させる側面もあります。大きな開口部は、開放的で美しい景色だけでなく、夏の日差しや冬の寒さも室内に取り込んでしまいます。例えば、断熱性能だけを重視するなら、極端な話窓のない住宅の方が効率が良くなります。

さらにプライバシーの問題もあります。どれほど眺望が良くても、外から丸見えでは心地よく暮らすことはできません。また、せっかく家を建てても、リビングの掃き出し窓がいつもカーテンが掛けられ、外とのつながりを遮られているようでは意味を成しません。

快適な住環境を実現させるためには、開口部の持つ課題の解決方法を慎重に検討していくことが大事です。

 

 

1.夏と冬とで開口部の熱対策を分けて考える

夏は日射遮蔽を南側・東西側で異なる対処をします。経度が32度程度の長崎では夏の日中の日差しは庇を70センチ程度出せばカットできます。一方、西と東からの日射は高度が低いため庇だけではなく植栽を上手に使いながら外部で日射熱を遮ると効果的です。

開口部の冬の寒さ対策としては、簡単なものは厚手のカーテンが有効になりますが、採光を遮ってしまうため、断熱性能と採光を両立できる障子や断熱ブラインド(ハニカムスクリーン)をお勧めします。また、冬の日射は室内の暖房に有効活用できるので部分的に窓ガラスのLow-Eガラスをなしにすることも考えられます。Low-Eガラスは断熱性能の高いガラスですが、日射熱を遮断してしまうので検討しながら採用します。夏場に葉が茂り冬に葉を落とす落葉樹なども、日射コントロールに有効な働きをするので場所によって使っていきます。

 

2.通風口・換気口としての開口部の役割を考える

通風の確保も、開口部の重要な役割になります。窓から流れ込んでくる風やにおいは、外部環境とつながる心地よさを感じさせてくれる大事な要素です。心地の良い季節、春の訪れのにおいや秋の金木犀など好きな方も多いのではないでしょうか。

通風経路としては、平面上の向かい合う場所に開口部を確保すれば空気が全体を巡り換気効率も上がります。また、断面への配慮も大事で吹き抜けや階段など、上下階をつなぐ風の通り道も考えます。風がなくても、室内の気圧差によって上下の窓の配置は、ゆっくりと空気を動かすこともできます。

 

3.プライバシーに配慮して外部とのつながりを得る

開口部の設計では忘れずにプライバシーを考慮していきます。魅力的な眺望を得るために設けた開口部も室内のプライバシーが確保されてなければ、1年中カーテンやブラインドで閉ざされてしまいます。近隣の距離や位置関係を考慮しつつ、開口部の大きさ・高さ・方向を検討して、外からの視線にさらされない工夫が必要となります。建築的な解決に加えて、庭の設計・植栽も目隠しにうまく活用しプライバシーを確保することが有効となります。

 

最後に、、

その土地にしかない景観や心地よさを室内に取り込むことで、暮らしはもっと豊かなものになると思います。居心地の良い住環境にするために、“屋内環境と屋外環境の繋がり”を整理し、暮らしを大事にした設計を行っています。

つくづく、“暮らし・住まう”というものを考えると、本当に深いなと思います^^

 

 

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