暮らしの手帖
これからの暮らし方のヒントや、すまいづくりに役立つ情報をお届けします。
植栽を通して、景色を切り取り四季を感じる暮らし。
植栽(お庭)は単なる外構の装飾ではなく、豊かな暮らしを成立させるための不可欠な要素です 。「家庭」という言葉が「家」と「庭」と書くように、家には庭があって、家庭という営みが生まれると考えています。建物という「箱」の性能を高めるのはもちろん大切ですが、その先にある「豊かな暮らし」を実現するためには、窓の外に広がる緑の存在が欠かせません 。単に家を建てるだけではなく、完成した後の暮らすことを考え、庭は生活に彩りと潤いを与える大切な「居場所」の一部となります 。
1. 窓を通して景色を取り込み、外部と緩やかに繋がる
家づくりにおける大切な要素に「景色を取り入れる」ことが挙げられています 。これは、なるべくカーテンを閉め切らずに、外の景色を楽しみながら生活できる提案を意味します 。例えば、リビングやダイニングの大きな窓から、庭の緑や遠くの山々を眺めることで、室内空間は実面積以上の広がりを感じさせます 。自分の庭の緑(近景)と、外に広がる自然や空(遠景)を視覚的につなぎ、日常の何気ない景色を特別なものへと変えてくれます 。窓を「光を入れるだけの装置」ではなく「景色を切り取る額縁」として捉え、そこに最適な植栽を配置することで、室内にいながら季節の移ろいを感じる豊かな時間が流れるようになります 。
2. 五感を癒やす「緑のお裾分け」と地域へのマナー
庭づくりは、住まう人だけでなく、道行く人や地域社会に対しても価値をもたらします。敷地境界ギリギリにブロックやフェンスを設けて閉ざすのではなく、あえて一歩引いて道路側に植栽を施す「緑のお裾分け」という考え方を大切にしています 。春には花が咲き、夏には深い緑が涼を呼び、秋には紅葉、冬には落葉といった四季の変化は、住人だけでなく街を歩く人の目も楽しませてくれます 。こうした外構計画は、街並みに対する「マナー」でもあり、建物の重心を低く抑えた美しい佇まいと相まって、地域に溶け込む優しい景観を創り出します 。また、植栽は視覚的な美しさだけでなく、葉の揺れる音や土の香り、窓を開けた時に通り抜ける心地よい風など、住む人の五感を癒やし、日常を浄化してくれる存在となります 。
3. 建築の一部としての造園
庭づくりは、建物と一緒に考える必要があります。建物(家)だけ完成しても殺風景。植栽や外構などの庭ができることで建物も引き立つものです。また、雨の日でも楽しめる屋根のあるデッキや、「つくばい」の設置など、水と緑を組み合わせた情緒的な計画もとっても重要になります 。建築家の伊礼智さんの「豊かなものは外部からやってくる」という言葉の通り、水面に光が反射して光の影が天井を揺らしてくれたり、窓や開口部のディテールと庭の計画をセットで考えることで、高性能な家という「箱」の中に、外部の豊かなものを効果的に取り入れることができるのです 。
4. 経年変化を愛しみ、家族と共に成長する庭
植栽の大切さは、時間が経つほどに増していきます。新築時が最高潮ではなく、年月を経て木々が成長し、家全体が風景に馴染んでいくプロセスを楽しむことこそが、家づくりの醍醐味です 。無垢の木や杉板の外壁が、時と共にシルバーグレーへと味わい深く変化するように、庭の植物もまた家族の成長と共に豊かな表情を見せるように、春には花が咲き、夏には緑が繁り木陰を作ってくれます。秋には紅葉し、冬には落葉して光が部屋の奥まで届くようになります。そして、また次の年の春がやってきます。手入れをしながら緑を育む暮らしは、子供たちに季節の移ろいや自然の恵みを教える食育や情操教育の場にもなるでしょう 。夏には子供たちが庭でプールを楽しみ、木陰で涼み、秋には実ったブルーベリーを収穫する 。そんな「庭があるからこそ生まれる体験」の積み重ねが、住まいへの愛着を深め、本当の意味で長く住み続けられる「価値ある家」を創り上げていくのだと思います。


