暮らしの手帖
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インスペクションとは?

近年、中古住宅を売買する際のインスペクションが注目を集めています。
「インスペクションって何のこと?」と思われる方も多いかもしれません。2018年にはその対応方法について改正宅地建物取引業法が施行されることになるなど法的な整備も進んでいますが、一般の方の認知度はまだまだといったところが現状のようです。そこで今回は、インスペクションの基本的な内容と、インスペクションを活用するメリット等についてまとめてみました。
1.インスペクションとは?
住宅におけるインスペクションとは、「住宅診断」、「建物検査」などと呼ばれたりもするのですが、具体的には、
建築士などの資格を持つ建物に精通した人(※国土交通省が実施する「既存住宅状況調査技術者講習」を修了して登録を受けた建築士)が、第三者的立場から、
・家の劣化状況
・欠陥の有無
・修繕や改修、メンテナンスの必要性とその費用
などのアドバイスをするものです。
住んでいる方が、「今の家の状態を知るため」に行うインスペクションもありますが、関心が高まっているのは、中古住宅を売買する前のインスペクションです。アメリカなどではごく一般的なことで、日本でも流通させたいと考えた政府は2013年に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」というものを策定しました。
内容としては、一戸建ての場合、下記のものを対象としてチェックすることが定められています。
◎構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの
基礎、小屋組、柱、壁、梁、床、床組、土台
◎雨漏り、水漏れが発生している、または発生する可能性が高いもの
屋根、外壁、屋外に面したサッシ等、小屋組、天井、内壁
◎設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの
給水管、給湯管、排水管、換気ダクト
※検査は原則として目視や計測を中心とした「非破壊検査」です。特別な依頼をした場合以外は、壁に穴を開けて内部を確認するような検査が実施されるわけではありません。

2.売買前のインスペクションには、どんなメリットが?
中古住宅は、売主がこれまでどのようなメンテナンスをしてきたかによって状態が大きく変わるので、単純に築年数だけではその価値が判断しにくい所があります。劣化の状態がわからないと、購入後どんな補修が必要になってくるか、費用などの面でも不安が残ります。
しかし、売買の前にインスペクションを実施しておけば、建物の状態を客観的に評価されたものを知ることが出来ます。今後建物にかかってくる費用などを把握でき、諸々考慮した上で購入を検討できるのは、とてもいいですよね。主なメリットをまとめると、
◎建物のコンディションを知り、必要な補修ヵ所、費用が把握できる
◎そもそも妥当な金額なのかの判断材料となる
◎リフォーム前提の購入がしやすくなる
◎インスペクションの実施を前提とした保険に入ることが出来る
(※引渡し後になんらかの欠陥が発生した場合の備えになります)
また、このように買い主が安心して取引が出来るということは、売主にとっても同じように安心感があります。売買に際して、双方にメリットがあると言えるでしょう。
現在、インスペクションの実施そのものは法律で義務化されていませんが、売主が売却の依頼をしたら、仲介業者はインスペクション業者のあっせんの可否を示し、意向に合わせてあっせんしなければいけません。また、インスペクションをあっせんした場合、その結果を重要事項として説明することも義務づけられています。
リノベ―ションなど、中古物件の需要も以前に比べると随分高くなってきました。大手仲介会社では、既に数年前から建物検査と保証をセットにしたサービスを提供する例が多くなっています。分からないことがあれば、仲介会社の営業担当の方に積極的に訪ねて、納得した上で物件購入ができればいいですね。