暮らしの手帖
これからの暮らし方のヒントや、すまいづくりに役立つ情報をお届けします。
「カッコいい」ことって?
好きな建築家の1人で宮脇檀(みやわきまゆみ)さんって方がおられました。女性っぽいお名前ですが男性です。既に他界しておりますが、現在の日本住宅において、素晴らしい建物をいくつも残しておられます。そして書籍も多く出ており、その書籍のひとつのまえがきをお嬢さんが書かれている内容が考えさせられました。(ご本人が亡くなられたあとに出た書籍です。)少しだけご紹介いたします。
丸善株式会社から出版されている「暮らしをデザインする」という本です。著者 宮脇檀/まえがき 宮脇彩
一部引用させて頂きます。
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とにもかくにも、デザインにうるさい父であった。
宮脇と言えば「カッコよければ全てよし」が口癖で、二言目には「で、それカッコいい?」とくるというのは、仲間内ではつとに有名な話である。
家庭においても然り。私や弟のねだるオモチャや服でさえ、父の「デザインが悪いからダメ」のひと言で何度却下されたことだろう。勉強しろだの、こんな人間に育ってほしいだのとうるさく言うことはなかったが、こと美しく住まうこと、ものの美しさを見分ける目を養うことに関しては、生活の中で折にふれ説き、実践してみせるのが父のやり方であった。
それはたとえば、マヨネーズをチューブのまま食卓に出さないと言った小さなことであったり、ブティックで服を見立ててくれた際の色の組み合わせ方講座であったり、旅に出れば他の予定を削ってでも美術館に足を運ぶよう努める姿であったりと、ありとあらゆることに及んでいた。
年端のゆかぬ子供の頃は「デザインの良し悪し」という物差しが飲み込めずグズったことも度々あったけれど、成長するにつれ自然と得心がいくようになり、私自身もこの考え方を受け継いでいることに気付く。なにか困った時は大概の場合「カッコいい」か「カッコわるい」かで判断するようになっていたのだった。
格好良く生きること。自分のスタイルを持つこと。暮らしをデザインすること。それらを浅薄と捉えられる向きもあるかもしれない。けれど私は、美しさを追求する生き方、そしてそれを貫ききった父を誇りに思っている。「カッコいい」は見てくれだけに限ったことではなく、その人の生き方の本質にも関わってくると信じているから。
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このようにお父さまとの思い出を語っておられます。私自身、暮らしをしっかり見つめていくいいきっかけになりました。ご参考まで。
ただ作るのではなく、しっかり考える。何にでも言えることだと思います。フルマークハウスとしてもただの家をつくるのではなく、しっかりと考えられた住まいをご提案していきたいと改めて感じました。
実物の建物は拝見したことはないですが、ビルダーズという住宅専門誌でも特集されています。画像は、ビルダーズより拝借させて頂いています。
いい建物がしっかりと残っていくことが、環境のため、風土のため、地域のために必要だと思います。